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福岡高等裁判所 昭和25年(う)451号 判決

被告人

野口知徳

外二名

主文

原判決を破棄する。

被告人野口知徳を懲役一年、被告人山根裕、同花島誠を各懲役二年に処する。

但し本裁判確定の日から各五年間右刑の執行を猶予する。

原審並びに当審における訴訟費用は全部被告人山根裕、同被告人花島誠の連帯負担とする。

理由

弁護人和智龍一の控訴趣意第一点について。

原判決は被告人山根、同花島に関する事実摘示中に、いずれも住居侵入未遂の事実を記載しながらその法令の適用を逸脱していること、まことに所論のとおりである。従つて同被告人等については刑事訴訟法第三百八十條にいわゆる法令の適用に誤があるものといわねばならぬ。しかし原判示事実は右住居侵入未遂の外、各数個の窃盜行為を挙示しており、右は刑法第四十五條の併合罪にかかるものであつて、結局同被告人等の所為についてはそれぞれ同法第四十七條、第十條により、そのもつとも重い特定の窃盜罪の刑に従い法定の加重をした刑期範囲内で量刑処断せらるべきものであるから、たとえ右住居侵入未遂の所為について前記のように法令適用の逸脱があつたとしても、原判決には影響を又ぼすものでない。そして原判決は右住居侵入未遂以外の同被告人等の各数個の窃盜の所為につき、それぞれ刑法第二百三十五條、第六十條を適用し且つ前記併合罪の規定により被告人山根については、そのもつとも重い判示第二の(七)の罪に、また被告人花島についてはそのもつとも重い判示第三の(六)の罪につきそれぞれ法定の加重をした刑期範囲内で主文の刑を量定しているから住居侵入未遂の所為につき、その法令適用の逸脱による誤りは結局原判決に影響を及ぼしていないものといわねばならぬ。所論は結局理由がない。

(註 本件は量刑不当により破棄自判)

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